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【特集】呼吸法を整えてウェルビーイングに繋げるには

大ヒットアニメーション「鬼滅の刃」で主人公の竈門炭治郎をはじめとした鬼殺隊の隊士達が全集中の呼吸という方法を取り入れることで身体能力を飛躍的に向上させて強靭な鬼たちに立ち向かうというシーンが要所々々で登場します。肺に空気を大量に取り込むことで高い集中力と身体能力を得るという「全集中の呼吸」と、それを四六時中続けることで出血を止めたり毒の効果を遅らせる「全集中・常中」という方法が出てきましたが、実生活においても呼吸によって血液中の酸素濃度を高めることは全身の細胞が活性化されるというメリットがあります。

鼻からの深くゆっくりとした呼吸がストレスケアに役立つ

私たちの体には健康な状態を維持するための「自律神経」が備わっていて、活発な時に心身を興奮させる「交感神経」と、心身がリラックスした時に働く「副交感神経」のバランスを保ちながら身体機能を維持しています。そのため、過度なストレスなどによりどちらか一方が優位な状態が続くと、体に様々な不調が起こりやすくなります。

ストレスによって過度の緊張状態になると交感神経が優位になり、呼吸筋がこわばって肩や胸での浅く早い呼吸になってしまいます。そうなると呼吸の効率が下がり、それがまた不安や緊張を招くという悪循環に陥ってしまいます。そこで鼻から意識的にゆっくりと深い呼吸を行うことで、肺に取り込まれる酸素量を増やすことができるため副交感神経の働きを優位にして気持ちを落ち着かせることができます。

呼吸のリズムを変えると、リラクゼーションの信号が送られて心拍数が減少し、副交感神経の代表的な神経である迷走神経が刺激されます。体の「休息と消化」活動を担う副交感神経の一部が刺激されることで気持ちが落ち着くことでストレスケアに繋がります。

研究が進められる呼吸法

世界的に成功を収めた経営者やリーダーが取り組んでいる禅(Zen)。簡単にできるということもあって今では多くの人が実践し、その呼吸法に関する研究も進められています。「ハーバード・ビジネス・レビュー」に掲載された呼吸に関する研究(Research: Why Breathing Is So Effective at Reducing Stress, September 29, 2020. )によると、高いストレス状態に晒されている時、合理的思考を司る前頭前皮質(脳の一部)の機能が低下するため、論理的思考がコントロールを取り戻すのに役立つことはほとんどないそうです。一方で、呼吸法を使えば、ある程度心をコントロールできるようになるといいます。感情と呼吸形態は相互に関連しているため、呼吸の仕方を変えることで気分を変えられる、という研究もあります。

ウェルビーイングとしても注目される呼吸法

呼吸法はウェルビーイングを得る手段としても注目されています。心を今に向けることでありのままに受け入れる状態を目指すマインドフルネスは、元々仏教の教えに由来した思想ですが、Apple創業者のスティーブ・ジョブスが熱狂的に取り組んだこともあって自己啓発・ビジネススキルとして全米に広がっていきました。

ハーバード大学におけるマインドフルネス瞑想プログラムに関する研究「The Harvard Gazette」によると瞑想の効果を「瞑想の実践は平和と身体的なリラックスに関連しているが、瞑想を実践してきた人たちは、認知的・心理的な効能が1日を通して継続することを長く主張してきました。今回の研究は、脳の構造的な変化が報告の根拠となること、そしてただ単にリラックスの時間をとっていることにより気分が良くなっているだけではないということを証明しています」と説明しています。

この研究からもマインドフルネス瞑想を取り入れることで心身の穏やかさを保つとともに、心に余裕が生まれることで相手のことを広い心で受け止められるようになることから、人間関係が円滑になるといった点も注目されています。

腹式呼吸のメリット

マインドフルネス瞑想では腹式呼吸を通じて呼吸に意識を集中させます。これは瞑想だけでなくヨガや気功、太極拳といった様々な分野でも取り入れられています。腹式呼吸はお腹から息を吸うようにゆっくりと息を吸って、体の中に溜まった負の感情を出し切るように口から吸う時以上にゆっくりと息を吐き出す呼吸法です。

腹式呼吸は幸せホルモンとして有名な脳内の神経伝達物質「セロトニン」の分泌を増やすことが分かっています。セロトニンの作用によって感情の乱れやイライラが鎮まり、意識の深いところで精神が安定し集中力が高まると言われています。

いかがでしたでしょうか。何気なく行っている呼吸ですが、少しだけ意識してみるだけでも全然効果が異なることがご理解いただけたかと思います。また、腹式呼吸を行うときは単に呼吸をするのではなく、吸う時に好きな風景や香りをイメージして、吐く時にイライラや緊張・不安などの負の感情を吐き出すようなイメージをしながら取り組むと効果的です。